○日本におけるいろいろなお墓の形態
・亀甲墓
沖縄や奄美の島々には、棺を地上に放置する曝葬(ばくそう)や洞窟葬が行われ、埋葬後、十数年ののちに洗骨するという風習がありました。
沖縄本島では亀甲(きっこう)墓と呼ばれる大きな同族墓が現在も多く見られ、洞窟葬と中国式のお墓の結合と推測されています。
・逆修墓
仏教では生前にお墓を作ることを「逆修(ぎゃくしゅう)」と呼びますが、聖徳太子が自ら墓所を築いたことなどから、現在でも生前にお墓を作ることは尊ばれています。生きている人の法名には朱を入れておきます。
・無縁墓
行き倒れの人や、子孫のない人々のお墓は無縁墓として、寄せ墓といって一つに場所をまとめたり、一括して三界万霊塔を設けます。
○世界でみる お墓の文化
「お墓」という観念がみられる最古のものは、ヨーロッパの旧石器時代中期にみられます。
フランスのムスティエ洞窟では、伸屈葬や屈葬がみられ、副葬品も添えられています。
ラ・フェラシー遺跡では、男女と子どもの計4体の遺骨が発見され、周囲には石器や動物の骨などの副葬品も添えてありました。
旧石器時代後期には、お墓の様相は複雑化し、遺体を土葬したり、遺体の手足に石を乗せるなど、お墓に石が多く用いられるようになります。新石器時代には巨石文化として、メッセージ性を伴うドルメン、ストーン・サークルなどのお墓へ変化していきます。
農耕時代に入ると、定住化、また一部の権力者の出現によって、エジプトのピラミッドや中国の王墓、日本の天皇陵などが作られるようになります。埋葬方法も国や文化によって細分化され、副葬品も様々です。
遺体を地中に埋葬し、塚を築いたり墓標を建てる方法は、仏教、キリスト教、イスラム教などの大宗教に特徴的に見られます。
○いろいろな葬法
葬法には、根底に死者に対する2つの意識が存在します。死者から早く接触を断とうとする意識、逆に死者との接触をできるだけ長く保とうとする意識です。
死体を一回で処理せず、何回にもわたって処理をしたり、遺骨を保存しておく葬法は「複葬」と呼ばれます。死者(遺体)との接触を長く保とうとする意識から、このような複雑な方法が選ばれます。先ほどご紹介した沖縄や奄美の島々で、遺体を再び取り出して洗骨する方法はこの複葬にあたります。
北アジア、中央アジア、インドネシア東部、メラネシア、オーストラリア、アメリカなどで、台の上に遺体を置く台上葬や、担架のような台に乗せて木の間に安置したり吊り下げたりする樹上葬という方法があります。天に近い高い場所に遺体を安置することで、早く天上界へ昇れるように、という願いが込められています。
アフリカ、インドネシア、南米アマゾン地域に点在している埋葬法として、遺体を家屋の内部に葬る地域もあります。お墓の上に小屋を建てる慣習は、上記地域の他、オーストラリア、北アジア、アメリカ、東南アジアなどに分布しています。
アフリカ、オーストラリアなど各地では、洞窟葬の一種である壁龕(へきがん)墓の形態も示しています。
断崖に作られた横穴墓を木の蓋で覆ってあるお墓ですが、死者を断崖に引き上げ、あらかじめ作っておいた横穴墓に埋納します。
チベット仏教やインドのパールシー教徒の間では鳥葬が行われ、パールシーでは、白い布に包んだ死体を「沈黙の塔」と呼ばれる高台に運び、ハゲタカやハゲワシなど鳥たちに処理させ、残った骨や髪は風化させます。
チベットでは山上へ運び、刃物や石で死体を鳥に食べやすいように砕いたり解体し、後日残った遺骨を回収して埋葬します。
メラネシア、ポリネシアでは舟葬など、遺体や遺骨を残さないで処理する方法も行われています。
火葬後、遺骨を神聖な川に流すヒンドゥー教も、お墓を持ちません。
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